ウェルビーイングを支援する社会教育職員の新しい専門性 2026年5月23日 ヘルスケア・カウンセリング学会学術大会研究発表 若者文化研究所 西村美東士 第4期教育振興基本計画 令和5年6月 「持続可能な社会の創り手の育成」及び「日本社会に 根差したウェルビーイングの向上」 ウェルビーイングとは身体的・精神的・社会的に良い状態にあることをいい、短期的な幸福のみならず、生きがいや人生の意義など将来にわたる持続的な幸福を含むものである。また、個人のみならず、個人を取り巻く場や地域、社会が持続的に良い状態であることを含む包括的な概念である。 ウェルビーイングの実現とは、多様な個人それぞれが幸せや生きがいを感じるとともに、地域や社会が幸せや豊かさを感じられるものとなることであり、教育を通じて日本社会に根差したウェルビーイングの向上を図っていくことが求められる。 我が国においては利他性、協働性、社会貢献意識など、人とのつながり・関係性に基づく要素(協調的要素)が人々のウェルビーイングにとって重要な意味を有している。 このため、我が国においては、ウェルビーイングの獲得的要素と協調的要素を調和的・一体的に育む日本発のウェルビーイングの実現を目指すことが求められる。 これまでの社会教育主事の専門性 制度上の専門職「制度」としての理解 教育公務員特例法 この法律で「専門的教育職員」とは、指導主事及び社会教育主事をいう。 ヒエラルキカルな意味あいと、それとは逆に、一般行政職員による若手社会教育主事の無駄遣い かといって指導主事の問題  社会教育の自主性、自由性の尊重の精神からも、歓迎されない スタッフ機能発揮の困難 社会教育主事の退潮傾向 社会教育主事の減少 1996年(平成8年)の6,796人をピークに年々減少し、2021年(令和3年)には1,451人と、過去25年間で約8割も激減 また、たとえば東京都では社会教育主事室なきあとの、都内の関係職員のための研修機会は激減し、専門職員による研究集録等も中止されている。 雇用の流動化としての可能性 専門性をもった職員の育成のためには、短期すぎる期間の異動は阻害要因になる。 しかし、今日、従来の「制度としての専門性」の観点からは歓迎されなかった異動が、専門職員の人材活用の可能性として注目される。 たとえば東京23区では、社会教育主事からの一般職の管理職への異動が行われ、社会教育専門職としての地域連携や区民との協働推進などの手腕の発揮が期待される。 また、次のスライドで示すように、社会教育主事のコミュニティスクールの校長への転出など、新しい専門的人材活用の可能性も見え始めている。 このように、社会教育専門職員を「一生の仕事」として固執するのではなく、 専門性の育成を、雇用の流動化を踏まえた人材育成・活用の一環として効果的に実施することが新たに求められていると考える。 社会教育主事からコミュニティスクールの校長への転身 5月10日社会教育誌(日本青年館)主催のオンラインミーティングが開かれた。 栃木県立真岡工業高等学校の校長井上昌幸さんが、CS(コミュニティ・スクール)(学校運営協議会制度)の報告をした。制度発足当初は、「生徒のためになる」という説明のみ行って、教員の支持を取り付けた。 その後、県立高校という小学校区、中学校区とは異なる地域を対象に、モビリティリゾートもてぎなどの企業と連携し、CSを成功させた。その頃には、教員も地域との協働に自発的に取り組むようになったというから、元社会教育主事としての手腕はたいしたものであるといえよう。 井上さんの「地域の人が(高校生を)ほめる力は、教師の10倍」という言葉に、工業高校の生徒への愛情が感じられた。 社会教育施設の指定管理者制度 武雄市図書館 2013年4月よりカルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)が指定管理者として運営する、スターバックスや蔦屋書店が併設された民間委託の図書館。本を読むだ けでなく、本や雑誌・雑貨の購入もできる。 このように民間企業の自由な運営がメリットとしてとらえられると同時に、地域と市民のウェルビーイングのための「地域及びコミュニティとの協働」をどのように進めるかが、課題として浮かび上がる。 生涯学習センター指定管理者の動向 「生涯学習施設連携事業」企画者の思い  この事業は、生涯学習施設で働く中で、現場で求められる専門性とは何かわからず、一人で悩んでいた時に、色々な社会教育指導員研修に特別に参加する機会を得て、同じように現場で専門性に悩んでいる方が多くいることを知ったことがきっかけです。  「現場で求められる専門性」や「これからの生涯学習」について必要となることを一緒に考えていこうというつながりが広がっていく中で、自分の中でこれまで漠然としていた「社会教育・生涯学習」が少しずつ形を持ち始め、「これは大事にしたい」という小さな核のような思いが芽生えました。  一緒に悩んで、一緒に考えられる場があることで、きっと誰かの力になれるのではと感じています。講師の視点に触れたり、生涯学習に携わる仲間同士で交流を深めることで、皆さんの中に“自分なりの専門性"や“志"が芽生えるきっかけになれたら幸いです。 講師の思い・・・つながり、広がり、深まる  社会教育職員、とくに指定管理者の場合は、育ててくれるしっかりした組織もなく、相談できる経験者も少なく、「行く先のわからないまま」仕事をしているということが多いと思います。でも、その分、(「うまくやれば」ですが)自分らしい発想で仕事ができるということです。  青少年教育事業については、2000年頃まで「関連文献」の全国的な網羅収集と有識者による要旨を付与した「青少年問題に関する文献集」が発行されていましたが、途絶えてしまいました。青少年教育職員の交流と、自由語検索による実践研究公開(私のホームページでデータベースを公開しています)として貴重な機会だったのに、と残念に思います。  本事業が契機となって、生涯学習センターの事業系職員が「つながり、広がり、深まる」ネットワークを進められるよう全力でお手伝いしたいと思います。ネットワークの一番の目的は、「職員個人」が、個性的な方向で専門性を深め、発揮することだと考えます。  今回の講座を契機にして、能力開発や専門性の発揮について、ネットワークでの交流を通して、より深く追求していきましょう。 指定管理者社会教育ネットワークの展望 専門職制度よりも、社会教育の専門的能力の確実習得を目指すキャリア選択肢の拡大と多様化を可能にする 専門性シフトアップ 1.生涯学習とは何か…「学習・文化・スポーツ・レクリエーション論」を超えて 専門性シフトアップ 2.社会教育とは何か…主体性の尊重を超えて 専門性シフトアップ 3.生涯学習センターの役割・・・生涯学習のさまざまなセンターのセンター 専門性シフトアップ 4.ウェルビーイング…個人の幸福からの出発、「協調性」より「協働性」を 例 「子育て支援に参画・協働の視点を」