学術大会への新構想 西村美東士*             1.はじめに    われわれの目指す「QOL学」は、個人の生活や人生を全人的・全体的に把握し、その質の向上に関わるすべての支援活動に横断的で生産的な展望を示すものでなくてはならない。そのため、特定の学問分野に偏るものであってはならないことはもちろんのこと、いくつかの学問が、ただ単に並んでいるものであっても十分とはいえない。  それぞれのテーマに対して、各学門の知見を提出し合い、学問領域をまたいだ検討の中で、これまでの各自の学問領域の「レール」を必要に応じて軌道修正しながら、各学門が協働して「QOL学」の体系化を追求する必要がある。人権尊重に基づくカウンセリングや心理、教育、福祉等、真の学際と協働による「QOL学体系化」が本学会の目指す姿であり、本稿のテーマである「現代QOL学会学術大会への新構想」の究極のゴールでもある。  そのため、学術大会では、会員個人の自己決定による学びや発信、交流が自由にのびのびと行われるよう、会員間の「学び合い支え合い」の支持的風土を大切にして運営していきたい。  本年4月に開催された現代QOL学会理事会においては、各理事が次期の学術大会に向けてそれぞれの思いを自由に語り合った。そこでは、各自の学門領域からの知見をのびのびと披瀝しながら、なおかつ学術大会の成功に向けた求心力のある効率的な話し合いが行われた。われわれの会議は、望月雅和専門理事の進行もあり、いつもスムーズに進められている。なおかつ、中身としては、各学門領域からの知的刺激にあふれたものであり、学会の会議のあり方として注目に値すると考える。  このような自由な発言と、求心性のある進行のための会議ツールとして、われわれは「マインドマップ」を活用している。前述4月の会議のマインドマップでの記録の結果を次図に示しておきたい。マインドマップによって、自分の発言が会議の進行の中で位置づけられていることが実感できる。記録した項目の移動が自由にできるので、すでに違う議題に移っていても、後戻りが自由にできる。しかも、その後戻りが、メンバーにもマップの上で明らかに示されるので、他の会議のように、無意識に後戻りの発言を繰り返す参加者がいて、ほかのメンバーがストレスを感じるというようなことが少ない。そして、会議が終わったときには、マップもほぼ完成しており、会議参加者は持ち帰ることができるというのも、スピード感があって、心地よい。     図 学術大会の構想(現代QOL学会理事会決定、MINDJET社「MindManager」によって作成)    本図において、理事会出席者がとくに意識したことが、「ミニマムで質の高い大会」である。3の「大会の構造的な構想」は、その意識のもとに検討された。そのためには、むやみに参加人数の拡大を図るのではなく、大会参加者が自らの立場と考え方のもとに、主体的に学び、個性を発揮して発言し、交流できるよう、互いに支え合うような風土が求められよう。  次期の学術大会では、このような自由な支持的風土に支えられて、専門領域を越えた「QOL学」の新たな原理、テンポラリーな研究テーマ、横断的な研究方法を開発していきたい。 * 若者文化研究所 --------------- ------------------------------------------------------------ --------------- ------------------------------------------------------------