社会を結びなおす−教育・仕事・家族の連携へ 岩波ブックレット 本田 由紀 (著) 価格:¥562  著者は、戦後の転機として、石油危機とバブル崩壊を挙げ、とくに後者については、完全失業者の増大など、日本経済は「底が抜けた状態」になったとする。それ以前の団塊世代などの「戦後日本型循環モデル」においては、仕事・家族・教育という三つの社会領域が結合され、父の賃金→家族→子への教育費→新規労働力というかたちで、社会が文字通り「まわっていた」。  一九九五年の日経連『新時代の日本的経営』は、多様な形態の非正社員の活用による事業の維持の姿勢に「お墨付き」を与えた。これ以降、「家族を食わす」に足るだけの収入が得られない男性の非婚化が進んだという。また、余裕層の中に、不透明社会に対して過剰なほど教育熱心な親が現れた。四〇人教室に、塾で三学年も先のことを学んでいる者と、家族の困窮や不和に苦しんで学習に向かえない者がおり、この教育格差と、家庭からの期待や要求の強まりの中で、教師は疲弊しているという。  筆者は、次のとおり新しい社会モデルを提示する。「組織の一員としての身分を与えられる」メンバーシップ型から、「一定の熟練や専門性に基づいて遂行される、ひとまとまりの行為」としてのジョブ型正社員への移行。将来に向かって生きていくための「中間的就労」などを支援する「アクティベーション」。そして、学校の役割を、「保護者や地域に開かれた学校」、「家族へのケアの窓口」と位置づける。  「社会がうまくまわらなくなった」現在、どういう職業意識をもった子どもたちを育てればよいのか。「うまくまわっていた」団塊世代とは異なる考え方が必要なのだろう。